1.今 世の中で起きていること、進む方向
4)今 世の中で起きていること(その3)
今回は「今 世の中で起きていること」の3回目になりますが、スピリチュアルブームについて、感じるところを述べてみたいと思います。
実感として今間違いなくスピリチュアル志向の人が増えている思といます。数値指標がないのですが、かなり増えているのではなでしょうか。その割にはメディアがあまり取り上げないなぁとも思います。物質サイエンス・パラダイムから見ると、まだ無視したい世界なのでしょうか。
最近のブームの特徴として感じることは、圧倒的に女性が多いということです。年齢は様々ですね。「風の時代」などの捉え方からしても、これからは女性性や母性が表に出てくる時代であり、当然と言えば当然です。スピリチュアルブームのスピリチュアルって何なのかと改めて私なりに考えてみると、これまでの行き過ぎた物質サイエンス・パラダイムからの転換期に、物質(分子や原子)の法則を超えた目に見えない何かの存在を認めて、これを受け入れることでしょうか。この目に見えない存在が、私達より高次の存在であることが多く、それが神仏であったり、天使とか精霊とか妖精だったり、宇宙的な存在だったりするのだと思います。そして、従来の伝統的な宗教とか、集団組織型の新興宗教ともちょっと違って、もう少し軽いノリのもののように感じます。哲学者の島崎隆さんは、論文の中でスピリチュアルについて「個々人が何か目に見えない不思議なもの、超越的なものと、一定のリアリティをもってつながっているという感覚のこと」と書かれています。こんな感じでしょうかね。
加えて私が結構好きな部類ですが、物質(分子や原子)よりミクロな量子論的物理学を追求するとスピリチュアルとの境界線が無くなってしまうような流れがあると思います。最先端の学者さんに多いパターンです。これまでこの小論の中で色々な角度から述べてきていることですが、今まだ物質サイエンスの考え方から抜けられない人達が、前時代の少数グループになって行く流れの過渡期なのでしょう。しかし、ある意味まだ時間のかかる過渡期であるために、スピリチュアルという言葉で雑多なものが扱われていて、その扱われ方に気になるケースも見られます。端的に言うと、パラダイムの転換に合わせて必要になる意識の変容がなされないまま、優越意識階層の人達がスピリチュアルに参入しているケースが多いため、スピリチュアルと言う衣を着て、周りと比べっこしながら金儲けをしたがる人達も見受けられ、それが結構多い気がします。
かなりセンシティブな話になりますが、よく取り上げられる「引き寄せの法則」を例に、少し私見を述べたいと思います。スピリチュアル系の方は、潜在意識の活用法などもテーマにされることが多いですが、そのひとつに願望実現を目的にした「引き寄せの法則」があります。潜在領域の意識に達成したいことを意図として刻み込むことで、それが現実化すると言ったイメージでしょうか。量子レベルの法則を考えれば、これは当然起こりうることで、実際にそれを体験されている人も多く、その体験を踏まえて指導的な立場になっている方も多いでしょう。
ちょっと考えてみたいテーマなので、かなり割り切って単純化した図34を書いてみました。本当はこんなに単純な話ではありませんが、単純化したこの図のポイントは、優越意識と自立意識に階層を分けてまとめているところです。図の中に「現生利益(げんせいりやく)」という言葉があります。現世利益は仏教用語で、信仰心をもって活動・修行などをした結果この世で得られるご利益・恵みと言った意味です。引き寄せの法則は、ミクロな物理法則に則っているために、そのポイントを外さなければ求めたものが何某かの形でこの世で得られることになります。引き寄せの法則による現世利益です。
さて、スピリチュアル系の人は、魂が生まれ変わることも受け入れている方が多いと思います。それが一個魂の輪廻転生と見るにしても、魂がくっついたり別れたり、変容したりすることもあると捉えるにしても、生まれ変わりを繰り返すという変容を通して、私達は成長というベクトルを持ち続けるものだと思います。カルマ論の話は章を改めてしたいと思いますが、引き寄せの法則を下手に使うと、今回の生涯がそれでハッピーに過ごせたとしても、生まれ変わって行く魂の先の歩みに於いて、カルマとして解消しないとならないものを増やしてしまう可能性があると思うのです。現世利益として得られたものが、優越意識の人が他の人と比べっこしながら得た成果物である場合、それは今生で死ぬときに手放すものである場合が多いと思います。成果物は手放しますが、それをなした執着のようなメモリーがカルマと成って死んだ後も残ってしまうというイメージです。ケースバイケースであり単純ではありませんが、自分を優位に置きたがる優越意識階層の人がその願望に引き寄せの法則を使った場合、カルマを増やす可能性が出て来てしまうと思うのです。
図35は超ひも理論からカルマを説明しようとして以前作った図です。最も広義にカルマを捉えると、超ひも波動の干渉パターンになり、それがあるから存在が存在として認識されて存在することになります。干渉パターンが無ければエネルギー波動はあっても存在として認識できない状態で、存在が存在して行く究極のゴールがそこだと思います。言い換えればカルマを全部解いて行くということです。
私達存在には毎瞬毎瞬次の瞬間に進む方向の自由度が与えられていますが、この自由度は極めて僅かで、自由に進めずに塞がれている方向がカルマになります。毎瞬毎瞬の自由度の選択次第でカルマは減り、自由度が上がって行きますが、選択を間違えると自由度が減る、カルマが増える方向に進むことになります。引き寄せの法則は、使い方を間違えるとカルマを増やすことになると思えてなりません。
最近量子論から引き寄せの法則を語る人も増えていますが、確かに引き寄せの法則は量子レベルの物理法則としてドライに働くと思います。結果が伴うケースは多いでしょう。一方で意識の持ち方の世界は、生まれ変わりを超えたカルマにも成りうる訳です。引き寄せの法則そのものやそれを使うことが問題ではありません。それを使う意識が優越意識をベースにした欲望のレベルにあると、カルマを増やすことになりかねないということです。こうした点に触れていないケースが多く見受けられるので、これが最近のスピリチュアルブームの中で、ちょっと危惧する点です。今回の人生での価値観の問題であり、人それぞれでいいと思いますが、私は干渉パターンを減らして自由度を上げて行くことが、存在として存在して行く時の目指すべきベクトルだと思っています。意識の自立している人の場合は、引き寄せの対象・成果もこの方向に乗っかるケースが多いと感じられ、先ずは意識の自立を目指そう!と思う次第です。
今回は大分辛口になりました。次回はどうなりますか。
※『22世紀型社会に向って -日本がそのモデルになって行く-』は、週1回くらいのペースで書き足しています。バラバラした投稿になっていますが、初めから順番に読みたい方は、note のサイトを見ていただくと、頭から読める投稿にしてあります。