2.22世紀型社会への道
2)日本がモデルになる?(その2)
これから22世紀に向かって行く世の中の流れの中で、経済は成長発展させるもの、人と比べてお金持ちになることが幸せなこと、たくさんお金を稼ぐことのできる人が優秀、多くの人達が当たり前に持っているこうした感覚を無くして行く必要があると思っています。そして、もしかすると日本がそうした感覚を先行して築いていく国になるのではないかと思うのです。
東西冷戦が終結し、そしてインターネットが世の中に出始めてそろそろ30年、この間これまで経済発展のスピードが遅かった開発途上国も含めて多くの国がGDPを伸ばす中、日本はバブル崩壊後ほとんど横ばいの状態を続けて来ました。日本でこの期間政権のかじ取りをして来た自由民主党が、官僚と一緒になってやって来た政治・行政は失敗だったと言っていいと思うのですが、それでも多くの国民が政権を変えようと声を上げずに自分達の生活水準を受け入れて生きているのだと思います。ある意味「足るを知る」意識感覚をどこかに持っている国民なのでしょう。後ろ向きにこの特性を使うのではなく、前向きに使っていけないかなと思うところです。そのためには、やっぱり自立意識への変容がキーになる訳ですが、日本人が持っているこの特性が、これから波状的に襲い掛かってくるのではないかと思われる様々な世界的な危機の中で、その対応に於いて輝きを増していくように思うのです。そうした中で世界の範となる日本人の中で意識変容が先行して進んで行き、その中から新時代の新しいタイプのリーダー達が生れて来る気がします。
昨年からアメリカのFRBが高金利政策に舵を切り、多くの国がこれに追随していますが未だに日本は低金利政策を継続しています。世界的な経済・金融崩壊を防ぐために日本が量的緩和政策の最後の砦になっている、日本国家の財政赤字が大き過ぎて金利を上げられない、色々理由はあるでしょうが日本国民は低金利に慣れきっています。米ドル基軸通貨体制が遠からず崩れて行く中で、ブロックチェーンを使った新しい世界共通の金融システムがきっとできて行くでしょう。根拠のない予感ですが、預けて置けばお金が増えるという仕組みの時代が終わって行くと思います。この流れにも、低金利政策の続く日本がスムーズに乗って行くような気がします。政府は資産所得倍増などと言って国民にも金融投資を煽っていますが、元々日本では他国に比べてハイリスクハイリターンの投資に手を染める人達は圧倒的に少ないですよね。それが他国に比べれば被害が少なく済むような事態を日本に生み続け、改めて日本人が注目されるような状況が生まれるのではないでしょうか。
もうひとつ現在の日本が抱える大きな問題として少子高齢化があります。最近異次元の少子化対策などと言っていますが、亡くなった安倍元総理大臣がアベノミクスを打ち出した時に、私は「今日本の最大の課題は少子化で、フランスの政策に見習うべきだ。」というようなコラムを書きました。そう言えば自民党の女性局員御一行が今年になってフランスに少子化対策を勉強に行って来たらしいですね。しかし、10年前にそれを主張した私は、今では考えがガラッと変わっています。進む少子高齢化は、その先の世の中のための地球の意思のように感じるのです。それが一早く日本で進んでいるのだと。
経済発展という価値観が無くなれば、人口は増える必要はありません。サステナビリティという視点に立てば、丁度いいところに均衡しているのが理想です。世界にはハードな手法で人口削減をもくろむ人達も間違いなくいるようです。少子高齢化の先にソフトな形で縮小均衡を迎える可能性の高い日本は、この問題でも世界の範となるような気がしています。勿論、縮小均衡に至るまでの道のりは楽なものではなく、人口に占める高齢者の比率が高まるピークをどのように乗り越えて行くのか、大きな試練が待っています。例えば、年金にしても医療体制・医療費にしても相当な変革を迫られる大きな社会問題になる日はそんなに先のことではないでしょう。意識の変容を進めながら大胆な改革が必要ですが、「健康・医療のこれから」のところで述べたように、「自分の力で生きるだけ生きて、それが出来なくなった時が死ぬ時」という当たり前のことが腑に落ちれば、医療・医療費の問題はほとんど無くなってしまうと思います。そういう意識変容をこれから並行して進める必要があります。
そこに一早く進んで行くのが日本のような気がしています。これから世の中で一段と予測不能な危機的状況が何回も生れて行く中で、気が付くと日本がそうした状況を自然体で克服して行く流れが、世界に示されて行くのだと思います。
次回からは、第3章「22世紀型社会への道」の最後の項として「今やるべきこと」を書き進めたいと思います。
※『22世紀型社会に向って -日本がそのモデルになって行く-』は、週1回くらいのペースで書き足しています。バラバラした投稿になっていますが、初めから順番に読みたい方は、note のサイトを見ていただくと、頭から読める投稿にしてあります。