1.今世の中で起きていること、進む方向
1)22世紀ってどんな世の中?
【パラダイムシフト】(その2)
本論のひとつのテーマをサステナビリティとしていますが、以前LOHASという言葉が話題になりました。LOHASはLifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字ですが、オーガニックな食べ物、心と体のバランスを整える活動(ヨガ、瞑想)、代替医療を含む人間としての全体性を考えた医療、クリーンなエネルギーや資源の循環、そんなことを意識したライフスタイルを心掛けることでしょうか。いいコンセプトだと思ったのですが、言葉の使われ方が曖昧だったことや、直ぐに金儲けに結び付ける人達が雑多に参入したことなどもあって、言葉としてのLOHASは余り聞かれなくなりました。
しかし、最近ライフスタイルとしては正にLOHASじゃないのと言う人達が急速に増えている気がします。殊にコロナ発生以降、都心を離れて地方に住み、こうしたライフスタイルを意識した生活を始められている方が多いのではないでしょうか。そう言う私も1年半ほど前から、生活のベースを東京から軽井沢の森の中に移したひとりです。 まだまだマジョリティではありませんが、こうした人達は、今この時代にどんなことを思ってライフスタイルを変え始めているのでしょうか。言葉にするのは難しいかも知れませんが、こうした変化からこの先の時代のパラダイムが考えられないものかと思います。
こうした方向性を持つ人達の底流には、私達を取り巻く現象が単独の物質化学反応の集まりというだけでは説明できないものであり、もっと複合的な・生態系的なもの、肌で感じられるもの、目に見えないものを大切にしないといけない、そうした感覚が流れているように思えます。
それをパラダイムとして捉えようとした時に、20世紀になった頃から探究が始まった量子力学、素粒子物理学の世界が思い浮かびます。世界を構成する最小単位と思っていた原子を物理学者が更に細かく内側を見に行ったら、原子は量子・素粒子というもので構成されていることがわかりました。このミクロな構成物を物理量として見ると量子になり、粒として捉えると素粒子という言葉が使われます。両者は同じものを捉えていると思うのですが、ここでは量子の英語であるクォンタムを使わせていただきます。そして、このクォンタムの性質、挙動がそれまでの原子や分子、それらから作られている物質とは、全くことなる不可思議なものだったのです。
見ていない時は波として飛び回っているのに、観察しようと見に行くと突然粒になる。運動状態を捉えようとすると何処にあるのか分からなくなり、何処にあるのか見つけると運動状態が決められなくなる。素人が一般人に伝えようとすると、こんな感じになるでしょうか。私達が当然と思って捉えているモノに対する概念が通用しない掴みどころのないモノで、実は私達は出来ているのだと言うことになります。
そして最近色々なところで引用される「量子もつれ」という性質があります。特殊な結晶を通過させるとひとつのクォンタムが2つに分かれるのですが、この2つのペアとしての性質が私達の常識的な理解を超えた挙動をすることが、実験によって明らかになっています。普段クォンタムは色々な動きを合わせ持って特定できない運動をしていますが、観察者が見るとその時に運動が決まる性質を持っています。回転運動を例にすれば、普段は上向き回転と下向き回転を合わせ持って特定できないものが、見に行くと突然回転の方向が決まった姿を現すという性質です。そして2つに分かれたペアのクォンタムが持つ「量子もつれ」とは、ペアの片方を観測してその回転方向が決まると、もう一方のクォンタムが同時に逆向きに回転する姿を現すと言うものです。それだけなく、このペアのクォンタム間に起こる現象は、ペアの距離をいくら離して行っても同時起きることが実験的に確認されています。地上と人工衛星の間でも実験は行われました。この現象は同時反応で、物理学的にこれ以上早い速度はないと言われる光速に縛られないことになります。
日々新しい研究が進んでいる分野ですが、私はこうしたクォンタムの性質をこれからの時代のパラダイムに結び付けていきたいと思っています。「量子もつれ」を拡大解釈すれば、「みんな繋がっている。宇宙中と同時に連携して動く仕組を私達自身が無限に内包している。」ということになります。LOHASな人達は、知らず知らずにそれを感じ取って生きているのではないでしょうか。
今回も難しい話になってしまいましたが、これくらいにして次回に続けたいと思います。