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『22世紀型社会に向って -日本がそのモデルになって行く-』(28回目)

2.色々な分野で起こるであろう変化

9)健康(医療・薬事)のこれから(その2)

 前回に続いて「健康(医療・薬事)のこれから」の2回目になりますが、今回は私達の体や心の健康について、これからの在り方を見て行きたいと思います。

 ここ100年か200年くらいの物質サイエンスの進展の中で進んだ医療や薬理の世界で正しいとされることは、その私達にできる物質サイエンスの限られた知見で検証されたものです。私達の体ひとつ取っても未知の領域の塊です。生命誕生以来38億年という長い年月を掛けて進化してきた私達の心身は、コミュニケーションの項でも述べたように、100兆匹を超える常在菌やそれを超えるだろう常在ウイルスと一体になった複合生態系です。この生態系が健常であることが、個々の人間においても健康の必要条件だと思います。

 前回薬を基本的に飲まない私が、健康に過ごしているお話をしました。健康に過ごすには免疫力が欠かせません。腸や腸内細菌が免疫に関わっていることは広く知られるようになって来ました。例えば抗生物質のような薬は腸内細菌にとっては毒と言っていいと思いますが、私達はここ100年、200年の科学研究活動で解明された狭い知見の範囲で、良い・悪いを当たり前に判断してしまっています。それを科学的な態度と称しています。医療・薬理の面で言えば、それが私達という生態系を壊してしてしまっていることが、たくさんあるのではないでしょうか。

 寄生虫を例にすれば、共生に対して寄生とは、取り付く宿主に対して不利益・害を及ぼすことです。回虫や蟯虫などの腸管寄生線虫は寄生害虫とされ、私が子供だった時代は検査をさせられ、見つかると駆除する薬を飲まされた記憶があります。もともと私達があたり前に体内に持っていた蟯虫や回虫の駆除が広域的に進むつれ、逆に増えて行った病気がアトピーや花粉症などのアレルギーや自己免疫性疾患です。そのメカニズムを研究した論文も多いですが、腸管寄生線虫の分泌物が腸内細菌の生息環境を健全にし、それが様々な免疫作用に関わっているようです。私達の生体内生態系の全様は、まだまだ未知の部分がほとんどで、そのことに私達は謙虚であるべきだと思うのです。しかし、新しい科学的知見が得られると、既存の知見による検証だけでそれを私達の身体にまで適用させてしまうことが、今の医学・薬学の世界ではあたり前に行われています。検証が既存の知識体系の中でしか行われないということは、ある意味あたり前のことなのですが、未知への謙虚さがないために、そこに固執し続けることが、今の多くの科学者達の態度のように思えてしまいます。間違いを犯した可能性に気が付いたら、直ぐに改めるべきなのに、これができない学者さんや権威ある学会が多いですね。回虫や蟯虫を例にすれば、回虫や蟯虫による私達への害はゼロではありませんが、大問題になるようなものは少ないですよね。特に蟯虫は。それなのに本来私達と共生してくれている彼らは、未だに寄生虫のレッテルを貼られ、駆除される対象になっています。ホモサピエンスとして30万年養ってきた体内生態系より、ここ100年、200年の誤った科学的知見を守るという現代の科学的態度の典型ですね。

 免疫性の疾患だけでなく、脳腸相関という言葉が示すように腸と脳の関係の研究も進んでおり、腸内細菌が脳内ホルモンの前駆体の生成に関係するなど、うつなどの疾患との関係も研究が進んでいます。体だけでなく心の健康にも腸内細菌が関係しているようです。更に腸内だけでなく子宮内フローラの研究も進んでいて、子宮内の細菌群が健常だと受精卵の胎盤への着床率が上がるということで、この点は不妊症の増加との関係が疑われます。健常な腸内フローラや子宮内フローラが形成されない人が増えることと、過剰な清潔感による除菌の習慣、特に乳幼児の時期を雑菌の少ない環境で過ごすことは、無関係ではないと思います。

 善かれと思って進めたことが、実はより多くの害を生み出してしまっている。これは健康や医療に限った話ではありませんが、健康・医療分野ではこうした問題点が目につきやすい気がします。私達の科学的活動は、ほとんど未知な世界の中で行っているという謙虚な自覚が必要です。私達の体や心の健康を、もっと広い視点から見直してみたいものです。

 健康についての話が続きますが、次回もう1回「魂の健康」という視点で考えてみたいと思います。

※『22世紀型社会に向って -日本がそのモデルになって行く-』は、週1回くらいのペースで書き足しています。バラバラした投稿になっていますが、初めから順番に読みたい方は、note のサイトを見ていただくと、頭から読める投稿にしてあります。

https://note.com/qeharmony_627/n/n1c014e6dbe0c

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